タイピング上達論 ~競技タイピングを志したあなたに~
※本記事はタイパーAdvent Calender 2020(https://adventar.org/calendars/5182)の1日目の記事になります。
(あまりにも難産でめちゃくちゃ時間かかりました、すみません…。めちゃくちゃ言語化へたくそマンになってますがお許しください…><)
追記:なんと、2011年末にコミケで頒布されたあの伝説のタイピング同人本『タイピング Professionals』が9年の時を経て電子版として無償公開されました!!!!!(https://typing.github.io/book_typing_professionals)
この本に収められているテルさんの「タイピング上達論」(とこの内容が少し難しく感じるならW/Hさんの「Typin' Girls - はじめての競技タイピング」)を読むことで、現代にも通用するタイピング理論を学ぶことができます!!!!!(正直テルさんとW/Hさんの記事さえ読めばこの記事読まなくてもいいです! …が一部新規性のある内容もあるにはあるので読んでもらえたら嬉しいです><)
同じくW/Hさんの『タイピングのすゝめ』(こちらはなんと2007年公開!)も「タイピング上達論」を読む足がかりとなる内容になっているのでおすすめです(http://dvorak.jp/archive/typing-no-susume.pdfをwayback machineでごにょごにょすると読めます)。
1.はじめに
2.「タイピングが上達する」ってどういうこと?
3.要素別練習論~処理パートを伸ばそう!~
4.要素別練習論~打鍵パートを伸ばそう!~
5.おわりに
みなさんこんにちは、たのんです。
今回は競技タイピングを志した方に向けて、タイピングの上達論の基礎的な考え方について述べていこうと思います!
今回の記事は、エタイ450~550・タイプウェルXE~XAくらいの実力の方を想定して書いています。
そのため、タイプウェルでZランクを出せるような上級者の方にとっては「常識」の再確認にしかならないかもしれません。
ですが、上級者の間での「常識」は往々にして共有されないものなので、こうして明文化することに一定の意義はあると考えています。
(本記事へのツッコミは大歓迎ですが、その際はぜひアドカレで知見を共有していただけると嬉しいです)
もっとタイピングが上手くなりたいという方にとって、本記事が今の実力から一歩先へと進む手助けとなれば幸いです。
それでは早速はじめていきましょう!
タイピングの上達論を語るために、まず、そもそもタイピングとは何なのかについて今一度考えてみましょう。
タイピングを行う際には、
・画面などに表示された文字を認識し、いくつかの動作に対応付ける(以下「処理パート」と呼びます)
・変換したそれぞれの動作を実行する(以下「打鍵パート」と呼びます)
という2つの作業が繰り返し行われていきます。
これら2つの作業をどれだけ速く正確に行えるかによって、最終的なタイピング速度が決まってきます。
というわけで、これらの作業をさらに細かく分析してみましょう!
まず、前者の処理パートについて見ていきます。
これは、
・画面に表示された文字を中心視野で捉え、正確に把握する
・中心視野で捉えた文字の周囲の文字を周辺視野で捉え、過去の経験や記憶などから推測する
・認識した文字列をいくつかの部分に分解する(チャンク化と呼ばれます)
・分解した文字列を具体的な動作に対応付ける
という4つの作業に分解できます。
例えば、「ぶらぶら」という文字列を見るとき、「ぶらぶ(ら)」というふうに中心視野・周辺視野で文字列を捉え、文字列を「bura/bura」などと切り分け、切り分けた文字列を「bura7841」などとして動作に対応付けていきます。
(かぎかっこの中の数字は指番号と呼ばれ、左手の小指から順に1,2,3,4,5,6,7,8,9,0が割り当てられています。この例の場合であれば、「bu」を右人→右中、「ra」を左人→左子と打つことを表します)
次に、後者の打鍵パートについて見ていきます。
これは、
・変換した動作のための予備動作を行う
・変換した動作をスムーズに行う
・いま行った動作と次の動作の間をつなぐ
という3つの作業に分解できます。
変換した動作をスムーズに行うためには、単純な手指の運動能力を高める必要があり、予備動作や動作間をつなぐ作業をスムーズに行うためには、複数の動作をまとめて1つの動作であるかのように行えるようにする必要があります(上級者と超上級者を分ける壁になります)。
また、実際のタイピングにおいては、上記の作業が並列して行われていきます。
作業の順番は「処理パート→打鍵パート」の順なので、処理パートが打鍵パートよりも遅いときは処理パートがネックとなります。
一方、処理パートが打鍵パートよりも速いときはネックになるパートがなくなり、打鍵パートの速度が最終的な速度に等しくなります。
そして、処理パートと打鍵パートの速度が近付いてくると、ある部分では処理パートに余裕があるが、別の部分では処理パートに余裕がなくなりネックとなってしまう、という状態が生じるようになります。
これを回避するための方法として「先読み」と呼ばれるテクニックがあり、上を目指すにあたって重要になるテクニックとなっています。
上記のことから、初心者のうちはタイピング速度が目に見えて向上するにも関わらず、一定のレベルに達すると急に速度の伸びが鈍ってしまう理由を説明することができます。
処理パートが十分に育っていない初心者のうちは、処理パートが打鍵パートよりも遅いので、タイピングをしていると常に処理パートに負荷がかかることになり、単に練習を重ねているだけで処理パートの能力を育てることができます。
一方、一定のレベル(エタイ400~450・タイプウェルXG~XE程度)に達すると、処理パートと打鍵パートの速度が近付いてくるため、
単に練習を重ねているだけでは処理パート、打鍵パートともに伸びづらくなってしまいます。
この伸び悩みを克服するためには、単に練習を重ねるのではなく、処理パート、打鍵パートのそれぞれに焦点を当てた練習を行っていく必要があります。
次項から、処理パートと打鍵パートのそれぞれの速度を伸ばすための練習法について述べていきます。
それでは早速、処理パートの各要素を伸ばすためにどのような練習をすればよいのかについて見ていきましょう!
一度に中心視野で捉えられる文字列の長さを伸ばすための練習についてですが、記憶の特性から、文字列をいくつかの部分に切り分けるパターンを増やすことは一度に捉えられる文字数の長さを伸ばすことに影響し、一度に捉えられる文字数の長さを伸ばすことは、文字列をより効率よく切り分けることに寄与すると考えられます。
したがって、文字列をいくつかの部分に切り分けるパターンを増やすことで長さを伸ばすことができます。
ただし、切り分けるパターンを増やすのには限界があるため、最終的には捉えられる文字数を純粋に伸ばす必要があります。
このためには、普段タイピングをする際に、少しでも多くの文字を頭の中に留めるという意識付けを行い、丁寧な練習を積み重ねるしかないと思います(経験がものをいう能力になります)。
この際、周辺視野で捉えた文字列から文章を思い出してしまうと文字列の長さを伸ばす練習にならないため、タイプウェル、寿司打、10FFなどのランダム単語系のタイピングソフトや、TyperacerやNitroTypeなどの十分な文章量があるタイピングサイトを利用するとよいです。
捉えられる文字列の長さを伸ばすには地道な練習が必要になるので、気長に続けるのがよいと思います。
周辺視野で捉えた文字列の予測の練習ですが、これは意識さえしていれば自然と身についていきます。
記憶している文字列の再生についても、エタイ腕試しやエタイ長文、タイ速などのワード総数が少ないものや、歌謡タイピングやTyping Tubeなどのようにそもそも打つべきワードが固定されているものを打ち込むうちに自然と練習できます。
「先読み」を伸ばす練習としては、適度な長さの短文をひたすらつないでいくのがよいです。
具体的には、エタイ長文、WT、打トレ、タイ速などの(半)固定短文系のタイピングソフトを打ち込むことで、少しずつ「ワードを打ちながら次の文字列を処理する」感覚を掴めるようになると思います。
認識した文字列の分解パターンを増やす練習は、基本的に座学が中心となります。
いわゆる最適化や綴りの打ち分け、左右打ち分けの練習がこれにあたり、運指パターンとして無意識に使えるようになるまで繰り返し練習する必要があります。
また歌謡タイピングやTyping Tubeなどの打ち切りに一定の速度を要求されるタイプのタイピングソフトや、エタイ腕試しや長文でのスコア狙いを通して特定のワードへの対策を進めていくことで、より実践的な練習を行うこともできます。
「特定のワードについてのみ練習した打ち方はそのワードにしか通用しないのでは」という考え方もあるかと思いますが、よほど特殊な打ち方でない限り、汎化と呼ばれる現象が起き他のワードにも適用できるようになると思います。
認識した文字列を具体的な動作に対応付ける練習は、意識的に処理パートに負担がかかるような練習を選ぶのがよいです。
具体的には、タイプウェル、10FFなどの切れ間なく処理パートと打鍵パートを繰り返す必要のあるソフトを中心に打ち込むとよいです。
この能力を伸ばしておくことで、認識した文字列の分解パターンを動的に変化させていくことができるようになり、初見の文章への対応力が高まると考えられます。
また最適化や左右の打ち分けを多用する場合には自然と養われていく能力だと思います。
それでは早速、打鍵パートの各要素を伸ばすためにどのような練習をすればよいのかについて見ていきましょう!
動作の予備動作を事前に行う練習について、これは無意識的な処理になるため、常に意識を振り分けることでしか伸ばすことができないと思います。
また、ある特定のワードを可能な限り速く打つ、という練習を続けることで、少しずつ身についてくるのではと思っています。
これは打鍵パートの練習すべてに共通しますが、動作の制御は無意識的な領域に入りがちなので気長に進めていきましょう。
動作をスムーズに行う練習は、例えば「kou」をひと息に打つなどのいわゆるアルペジオ打鍵の速度を高めていくことが中心になります。
標準運指の変更や綴りの打ち分け、左右の打ち分けなどの運指の最適化とは異なる、いわゆる動作の最適化と呼ばれる練習です。
メモ帳やWT、TypeLighterなどを用いて、タイプウェルの単語やアルペジオ打鍵のできる単語など短いワードを繰り返し練習していくことで、少しずつ速度を高めていくことができます。
そんなにがっつり頑張りたくないよという場合は、タイピングソフトを打っている際の待ち時間に直前のワードを何度か打つことでも少しずつ感覚が身についていきます。
アルペジオ打鍵の感覚として、指の高さを調節したうえで手を固めてしまいあたかもキーを同時押しするかのように打つタイプと、すべての指を独立させて素早く振り降ろすタイプの2つがあり、自分にとってどちらのほうが扱いやすいのかを見極めるのが重要になってきます。
いまの動作と次の動作の間をつなぐ練習は、究極的には「複数の文字列を1つの文字列であるかのように打つ」感覚を養う練習といえます。
これを実現するためには、ある文字列を打ち終えたときに次の文字列を打ち始めている、という状態を実現する必要があります。
最初は文字列を打ち終えたあとの動作を素早く行うところからはじめ、予備動作を行えるように意識付けていき、最終的には文字列の分解パターンを調整していくことになります。
これはどちらかというと処理パートの練習に近くなってしまいますが、これに限らずタイピングの各要素は複雑に絡み合っており、練習の際の意識付けがとても重要になります。
また、上記とは別に、左右交互に連打する速度や同じ指で連打する速度、1つの指を上下に動かす速度など、基礎的な運動能力も打鍵パートの速度に影響を与えます。
上記の練習を行うなかでも少しずつ運動能力は伸びていきますが、脳に指がついていかないという感覚を抱いたときは、いちど基礎練を取り入れてみるのもよいかもしれません。
以上、ここまでタイピングの上達論について述べてきました。
実際のところ、タイピングの上達に最も必要なのは練習の積み重ねなのですが、今の自分について意識しているだけでも成長速度は変わってくるはずです。
「理屈を踏まえた脳筋」は最強なので、この記事の内容に限らず、自分のタイピングに改善点がないかを意識しながら練習してみてください!
最後に、練習のモチベーション維持について少し触れておきたいと思います。
タイピングに限らず大抵の競技では、成長の曲線は
・長期的に見れば、伸び率は少しずつ落ちていくもののじわじわと成長が続く
・短期的に見れば、停滞が続いたあと突然ブレークスルーが訪れる
という形になるものだと思います。
そのため、「記録の更新」をモチベーションとしてしまうと、数週間、悪ければ数ヶ月にわたって更新ができずモチベーションが減退しかねません。
基本的には、記録の更新はあくまで実力がついた結果として訪れるものだと認識し、日々の練習のなかでの気付きや小さな成長をモチベーションにつなげていくのがよいと思います。
かなり長い記事になってしまいましたが、最後までお付き合いいただきありがとうございました!
この記事を読んでくださったあなたが、さらに実力を伸ばしていけることを祈っています。
アドカレ2日目はかり~さんの『タイパーインタビューその1』(https://typerinterview.hatenablog.com/entry/2020/12/01/164102)になります。
こちらもぜひご覧ください!
(あまりにも難産でめちゃくちゃ時間かかりました、すみません…。めちゃくちゃ言語化へたくそマンになってますがお許しください…><)
追記:なんと、2011年末にコミケで頒布されたあの伝説のタイピング同人本『タイピング Professionals』が9年の時を経て電子版として無償公開されました!!!!!(https://typing.github.io/book_typing_professionals)
この本に収められているテルさんの「タイピング上達論」(とこの内容が少し難しく感じるならW/Hさんの「Typin' Girls - はじめての競技タイピング」)を読むことで、現代にも通用するタイピング理論を学ぶことができます!!!!!(正直テルさんとW/Hさんの記事さえ読めばこの記事読まなくてもいいです! …が一部新規性のある内容もあるにはあるので読んでもらえたら嬉しいです><)
同じくW/Hさんの『タイピングのすゝめ』(こちらはなんと2007年公開!)も「タイピング上達論」を読む足がかりとなる内容になっているのでおすすめです(http://dvorak.jp/archive/typing-no-susume.pdfをwayback machineでごにょごにょすると読めます)。
もくじ
1.はじめに
2.「タイピングが上達する」ってどういうこと?
3.要素別練習論~処理パートを伸ばそう!~
4.要素別練習論~打鍵パートを伸ばそう!~
5.おわりに
1.はじめに
みなさんこんにちは、たのんです。
今回は競技タイピングを志した方に向けて、タイピングの上達論の基礎的な考え方について述べていこうと思います!
今回の記事は、エタイ450~550・タイプウェルXE~XAくらいの実力の方を想定して書いています。
そのため、タイプウェルでZランクを出せるような上級者の方にとっては「常識」の再確認にしかならないかもしれません。
ですが、上級者の間での「常識」は往々にして共有されないものなので、こうして明文化することに一定の意義はあると考えています。
(本記事へのツッコミは大歓迎ですが、その際はぜひアドカレで知見を共有していただけると嬉しいです)
もっとタイピングが上手くなりたいという方にとって、本記事が今の実力から一歩先へと進む手助けとなれば幸いです。
それでは早速はじめていきましょう!
2.「タイピングが上達する」ってどういうこと?
タイピングの上達論を語るために、まず、そもそもタイピングとは何なのかについて今一度考えてみましょう。
タイピングを行う際には、
・画面などに表示された文字を認識し、いくつかの動作に対応付ける(以下「処理パート」と呼びます)
・変換したそれぞれの動作を実行する(以下「打鍵パート」と呼びます)
という2つの作業が繰り返し行われていきます。
これら2つの作業をどれだけ速く正確に行えるかによって、最終的なタイピング速度が決まってきます。
というわけで、これらの作業をさらに細かく分析してみましょう!
まず、前者の処理パートについて見ていきます。
これは、
・画面に表示された文字を中心視野で捉え、正確に把握する
・中心視野で捉えた文字の周囲の文字を周辺視野で捉え、過去の経験や記憶などから推測する
・認識した文字列をいくつかの部分に分解する(チャンク化と呼ばれます)
・分解した文字列を具体的な動作に対応付ける
という4つの作業に分解できます。
例えば、「ぶらぶら」という文字列を見るとき、「ぶらぶ(ら)」というふうに中心視野・周辺視野で文字列を捉え、文字列を「bura/bura」などと切り分け、切り分けた文字列を「bura7841」などとして動作に対応付けていきます。
(かぎかっこの中の数字は指番号と呼ばれ、左手の小指から順に1,2,3,4,5,6,7,8,9,0が割り当てられています。この例の場合であれば、「bu」を右人→右中、「ra」を左人→左子と打つことを表します)
次に、後者の打鍵パートについて見ていきます。
これは、
・変換した動作のための予備動作を行う
・変換した動作をスムーズに行う
・いま行った動作と次の動作の間をつなぐ
という3つの作業に分解できます。
変換した動作をスムーズに行うためには、単純な手指の運動能力を高める必要があり、予備動作や動作間をつなぐ作業をスムーズに行うためには、複数の動作をまとめて1つの動作であるかのように行えるようにする必要があります(上級者と超上級者を分ける壁になります)。
また、実際のタイピングにおいては、上記の作業が並列して行われていきます。
作業の順番は「処理パート→打鍵パート」の順なので、処理パートが打鍵パートよりも遅いときは処理パートがネックとなります。
一方、処理パートが打鍵パートよりも速いときはネックになるパートがなくなり、打鍵パートの速度が最終的な速度に等しくなります。
そして、処理パートと打鍵パートの速度が近付いてくると、ある部分では処理パートに余裕があるが、別の部分では処理パートに余裕がなくなりネックとなってしまう、という状態が生じるようになります。
これを回避するための方法として「先読み」と呼ばれるテクニックがあり、上を目指すにあたって重要になるテクニックとなっています。
上記のことから、初心者のうちはタイピング速度が目に見えて向上するにも関わらず、一定のレベルに達すると急に速度の伸びが鈍ってしまう理由を説明することができます。
処理パートが十分に育っていない初心者のうちは、処理パートが打鍵パートよりも遅いので、タイピングをしていると常に処理パートに負荷がかかることになり、単に練習を重ねているだけで処理パートの能力を育てることができます。
一方、一定のレベル(エタイ400~450・タイプウェルXG~XE程度)に達すると、処理パートと打鍵パートの速度が近付いてくるため、
単に練習を重ねているだけでは処理パート、打鍵パートともに伸びづらくなってしまいます。
この伸び悩みを克服するためには、単に練習を重ねるのではなく、処理パート、打鍵パートのそれぞれに焦点を当てた練習を行っていく必要があります。
次項から、処理パートと打鍵パートのそれぞれの速度を伸ばすための練習法について述べていきます。
3.要素別練習論~処理パートを伸ばそう!~
それでは早速、処理パートの各要素を伸ばすためにどのような練習をすればよいのかについて見ていきましょう!
一度に中心視野で捉えられる文字列の長さを伸ばすための練習についてですが、記憶の特性から、文字列をいくつかの部分に切り分けるパターンを増やすことは一度に捉えられる文字数の長さを伸ばすことに影響し、一度に捉えられる文字数の長さを伸ばすことは、文字列をより効率よく切り分けることに寄与すると考えられます。
したがって、文字列をいくつかの部分に切り分けるパターンを増やすことで長さを伸ばすことができます。
ただし、切り分けるパターンを増やすのには限界があるため、最終的には捉えられる文字数を純粋に伸ばす必要があります。
このためには、普段タイピングをする際に、少しでも多くの文字を頭の中に留めるという意識付けを行い、丁寧な練習を積み重ねるしかないと思います(経験がものをいう能力になります)。
この際、周辺視野で捉えた文字列から文章を思い出してしまうと文字列の長さを伸ばす練習にならないため、タイプウェル、寿司打、10FFなどのランダム単語系のタイピングソフトや、TyperacerやNitroTypeなどの十分な文章量があるタイピングサイトを利用するとよいです。
捉えられる文字列の長さを伸ばすには地道な練習が必要になるので、気長に続けるのがよいと思います。
周辺視野で捉えた文字列の予測の練習ですが、これは意識さえしていれば自然と身についていきます。
記憶している文字列の再生についても、エタイ腕試しやエタイ長文、タイ速などのワード総数が少ないものや、歌謡タイピングやTyping Tubeなどのようにそもそも打つべきワードが固定されているものを打ち込むうちに自然と練習できます。
「先読み」を伸ばす練習としては、適度な長さの短文をひたすらつないでいくのがよいです。
具体的には、エタイ長文、WT、打トレ、タイ速などの(半)固定短文系のタイピングソフトを打ち込むことで、少しずつ「ワードを打ちながら次の文字列を処理する」感覚を掴めるようになると思います。
認識した文字列の分解パターンを増やす練習は、基本的に座学が中心となります。
いわゆる最適化や綴りの打ち分け、左右打ち分けの練習がこれにあたり、運指パターンとして無意識に使えるようになるまで繰り返し練習する必要があります。
また歌謡タイピングやTyping Tubeなどの打ち切りに一定の速度を要求されるタイプのタイピングソフトや、エタイ腕試しや長文でのスコア狙いを通して特定のワードへの対策を進めていくことで、より実践的な練習を行うこともできます。
「特定のワードについてのみ練習した打ち方はそのワードにしか通用しないのでは」という考え方もあるかと思いますが、よほど特殊な打ち方でない限り、汎化と呼ばれる現象が起き他のワードにも適用できるようになると思います。
認識した文字列を具体的な動作に対応付ける練習は、意識的に処理パートに負担がかかるような練習を選ぶのがよいです。
具体的には、タイプウェル、10FFなどの切れ間なく処理パートと打鍵パートを繰り返す必要のあるソフトを中心に打ち込むとよいです。
この能力を伸ばしておくことで、認識した文字列の分解パターンを動的に変化させていくことができるようになり、初見の文章への対応力が高まると考えられます。
また最適化や左右の打ち分けを多用する場合には自然と養われていく能力だと思います。
4.要素別練習論~打鍵パートを伸ばそう!~
それでは早速、打鍵パートの各要素を伸ばすためにどのような練習をすればよいのかについて見ていきましょう!
動作の予備動作を事前に行う練習について、これは無意識的な処理になるため、常に意識を振り分けることでしか伸ばすことができないと思います。
また、ある特定のワードを可能な限り速く打つ、という練習を続けることで、少しずつ身についてくるのではと思っています。
これは打鍵パートの練習すべてに共通しますが、動作の制御は無意識的な領域に入りがちなので気長に進めていきましょう。
動作をスムーズに行う練習は、例えば「kou」をひと息に打つなどのいわゆるアルペジオ打鍵の速度を高めていくことが中心になります。
標準運指の変更や綴りの打ち分け、左右の打ち分けなどの運指の最適化とは異なる、いわゆる動作の最適化と呼ばれる練習です。
メモ帳やWT、TypeLighterなどを用いて、タイプウェルの単語やアルペジオ打鍵のできる単語など短いワードを繰り返し練習していくことで、少しずつ速度を高めていくことができます。
そんなにがっつり頑張りたくないよという場合は、タイピングソフトを打っている際の待ち時間に直前のワードを何度か打つことでも少しずつ感覚が身についていきます。
アルペジオ打鍵の感覚として、指の高さを調節したうえで手を固めてしまいあたかもキーを同時押しするかのように打つタイプと、すべての指を独立させて素早く振り降ろすタイプの2つがあり、自分にとってどちらのほうが扱いやすいのかを見極めるのが重要になってきます。
いまの動作と次の動作の間をつなぐ練習は、究極的には「複数の文字列を1つの文字列であるかのように打つ」感覚を養う練習といえます。
これを実現するためには、ある文字列を打ち終えたときに次の文字列を打ち始めている、という状態を実現する必要があります。
最初は文字列を打ち終えたあとの動作を素早く行うところからはじめ、予備動作を行えるように意識付けていき、最終的には文字列の分解パターンを調整していくことになります。
これはどちらかというと処理パートの練習に近くなってしまいますが、これに限らずタイピングの各要素は複雑に絡み合っており、練習の際の意識付けがとても重要になります。
また、上記とは別に、左右交互に連打する速度や同じ指で連打する速度、1つの指を上下に動かす速度など、基礎的な運動能力も打鍵パートの速度に影響を与えます。
上記の練習を行うなかでも少しずつ運動能力は伸びていきますが、脳に指がついていかないという感覚を抱いたときは、いちど基礎練を取り入れてみるのもよいかもしれません。
5.おわりに
以上、ここまでタイピングの上達論について述べてきました。
実際のところ、タイピングの上達に最も必要なのは練習の積み重ねなのですが、今の自分について意識しているだけでも成長速度は変わってくるはずです。
「理屈を踏まえた脳筋」は最強なので、この記事の内容に限らず、自分のタイピングに改善点がないかを意識しながら練習してみてください!
最後に、練習のモチベーション維持について少し触れておきたいと思います。
タイピングに限らず大抵の競技では、成長の曲線は
・長期的に見れば、伸び率は少しずつ落ちていくもののじわじわと成長が続く
・短期的に見れば、停滞が続いたあと突然ブレークスルーが訪れる
という形になるものだと思います。
そのため、「記録の更新」をモチベーションとしてしまうと、数週間、悪ければ数ヶ月にわたって更新ができずモチベーションが減退しかねません。
基本的には、記録の更新はあくまで実力がついた結果として訪れるものだと認識し、日々の練習のなかでの気付きや小さな成長をモチベーションにつなげていくのがよいと思います。
かなり長い記事になってしまいましたが、最後までお付き合いいただきありがとうございました!
この記事を読んでくださったあなたが、さらに実力を伸ばしていけることを祈っています。
アドカレ2日目はかり~さんの『タイパーインタビューその1』(https://typerinterview.hatenablog.com/entry/2020/12/01/164102)になります。
こちらもぜひご覧ください!
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